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2022年6月9日(木)

【回想:釣りをしていなかった時代】

前回の「回想:ゴムボート時代」のコメントで,今の船を購入する経緯についての掲載を希望して頂いた.このようなコメントを下さるのは嬉しい限りである.


早速,記載しようとしたが,まずは今から伝える私の経験を共有しなければ,ご理解いただけないと思った.これは,私の船に対する考え方の転期である.


ゴムボート時代から貸し船を利用するまでの間で、ほとんどと言っていいほど,釣りをしていない数年間がある.その理由は,漁業者さんと様々な交流が原因である.


仕事で魚介類を高鮮度に保存するための製氷装置の開発に携わり,その装置の見通しが得られた.最後の仕上げとして全国の水産関係者と交流を図り,装置の詳細を決定していく段階であった.


釣りが大好きな私にとっては,「これは天職!」と意気込み,北海道から沖縄に至る漁業関係者と交流を行なっていた.このホームページは,高知の情報発信が目的であるため,高知エリアのことを以下に記述していく.


高知県内で交流した漁業者さんは,室戸市の大敷網漁や近海マグロ漁,須崎市の魚介類加工業者,中土佐町の漁協,カツオの1本釣漁,メジカ(マルソウダガツオ)の引き釣漁,土佐清水市の漁協である.


特に中土佐町では,交流を深めて様々な勉強をさせていただいた.やはり趣味の釣りとは異なり,仕事で漁を行なっている方々のオーラというか,スケール感は私の想像を遥かに超えていた.


カツオの1本釣り漁師さんたちと一杯やったときである.漁師の皆さんが話す内容は単刀直入.これは地域問わず全ての漁師さんに共通することである.私の勝手な解釈であるが,船上で命の危険を伴う場合があるので,必ず相手に伝わるように単純明確に表現をすることが身に付いているのではないだろうか.


印象に残っている会話を紹介する.

「兄ちゃん,こいつ海に転げたことがあったがやき,ほいたら次の波で帰ってきたが.がははは」

訳:お兄さん,この人海に落ちたことがあるのですよ.そうしたら次の波で船上に戻ってきたんですよ.はははは


「おまん,酔うたらその話ばあするけんど,わし転げたときの記憶がのうて,船上しかない」

訳:あなた,お酒に酔うとその話ばかりするけど,私は海に落ちたときの記憶が無くて,記憶は船上にいるときだけなのですよ.


「この間,キハダかけたろ,ありゃ早う言わな,横と絡むぞ.重みですっとわかるろう.」

訳:この間,キハダマグロかけたでしょう.あのときは早く言わないと,横の釣り人の仕掛けと絡れてしまう.かけたときの重みで直ぐにわかるでしょう.


「すまん,すまん.群の中にあればあがあ、入っちゅうと思うてもみんかった.」

訳:ごめん,ごめん.カツオの群にあれほど大きな魚が混じっているとは思ってもみなかった.


「ほやけんど〇〇度〇〇分あたりで,当たったにゃあ.カンコから湧きそうになって.船頭,ざんじ焼津に走るぞ!と喜んじょった.」

訳:それにしても(北緯)〇〇度〇〇分付近で,よく釣れましたね.魚倉から(カツオが)溢れ出そうになって,船頭さんが「すぐに(静岡県)焼津漁港に行くぞ!」と喜んでいた.


このような会話を直接漁師さんから何度か聞いたとき,船上の過酷さ,漁に向き合う真剣な姿勢を見せて頂いた.そして「ああ〜,いずれカツオ,マグロを釣りたいと思っていたけど,これは漁師さんに任せよう.食べたいときは買って食べる魚やなあ〜.」と心に刻まれた.


また,中土佐町でメジカ(マルソウダガツオ)漁を専門で行なっている漁師さんに,漁の同行を許されたときの話である.この漁師さんは,中土佐町で8〜9月にメジカを釣り,季節が進み南下するメジカの群れを追って,船で移動する.そして土佐清水漁港にて船で約数ヶ月間,宿泊しながら漁を続ける.シーズが終了すると,家のある中土佐町に戻るという生活を続けられていた.引き釣りメジカ漁のプロ中のプロである.


出港し,漁場付近まで来ると「おるにゃあ」と言ったが,私を含め同行した3人には,全くわからない.海面の色と波から判断するらしい.


そして,「(メジカの)頭に(船を)持っていって,(アカアミを)撒くき」と言い,冷凍のアカアミを専用の容器に入れる.この容器はスイッチを入れると冷凍アカアミに海水がかけられ,解け出していくアカアミが順次,船尾に流れ出される装置である.


アカアミが流れ出だすと,直径50mの円を描くように船を旋回させ続ける.仕掛けは,長さ2mほどのノベザオの先にカブラ(毛ばりのようなもの)がついており,これを4本船尾に設置する.


程なくして,メジカがわれ先にアカアミを食べるために,船尾に群れてきた.入れ食い状態である.漁師さんは,メジカを上げると,即座に首を折って保冷容器に入れ,仕掛けを再度投入する.この手際がめちゃくちゃ速い,計ったが「5秒!!!」


「年取って,体力がのうなってきたき.えいときでも1000(匹)いくかにゃあ.」と出港まえに言っていたが,十分に納得できたスピードである.



30分ほど釣るとメジカが掛かる回数が減ってきた.


「かからんようになったき,次行ってみよ.」と言い,移動して同様のことを繰り返す.

この漁師さんの技は本当に素晴らしかった.


私は,平日にこのような体験をした期間,休日に釣りに行く気になれなかった.プロのスケール感や技を目の当たりにして,それを週末に思い返して消化していくのが精一杯だったように思う.頭で,プロと趣味とは違うと言い聞かせても,以前のような釣りに対する気持ちに戻るには,時間がかかった.


また,船を持つならという,船種の好みもこの期間を境に変わってしまう.それまでは「プレジャーボートがいいかなあ〜.」,「ゆっくり寝られるスペースもあったら楽しいかなあ〜」,なあんてことも考えていたが...


それは,また次の機会に.

1 Comment


佐藤 健夫
佐藤 健夫
Jan 05, 2023

高知弁のヒアリング完璧です。素晴らしい

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